
石橋 孝太郎氏

Gazelle Capital株式会社/代表パートナー 石橋 孝太郎
これからスタートアップとしてデジタル化が進んでない既存産業に挑戦していく プレシード、シード期の起業家に対して必要資金の投資と、あらゆる環境支援を提供する独立系のベンチャーキャピタル、Gazelle Capitalです。
出会いのきっかけと最初の印象
HANOWA社の新井さんとは少し変わった出会い方をしていまして、とあるシードVCさんからのご紹介でした。それまでそのVCさんが投資予定だったとのことだったのですが、事情により投資が難しくなり、投資領域的に相性が良いのではとご紹介をいただいた事がきっかけです。
ある意味、新井さんにとってはVCという存在への信頼感を損なった状態での出会いだったのかもしれません。
投資を決めた理由
弊社が投資をさせていただくことになったのは、2019年の年末ごろでした。当時はサービスを出してまだ間もない頃だったと記憶しています。
そんな中でも出資をさせていただくこととしたのは、
- 市場のニーズが非常に明確であること
- その課題に対して、解決策を模索し続けられる個人的な背景も強いチームであったこと
の2点が大きな理由です。
現在もこれらは変わりありませんが、歯科業界では歯科衛生士に始まり多くの職種で、場合によってはITエンジニア職よりも人が足りていません。これは非常にわかりやすい課題であり、歯科医院としてもコストを支払いながら、様々な方法で解決を図るも、最適解は存在していませんでした。
その課題に対して、既存で歯科処置における免許を持っている方々の人の流動性をあげるという解決策で挑み始めていたHANOWAでしたが、場合によってはそれ以外の解決策を模索し続けてでも、課題解決を図ろうと想いも強くもたれ、粘り強くやれるチームだろうと感じ、出資をさせていただきました。
マーケットポテンシャル
歯科業界における人材給与の市場は、約2兆円(HANOWA社調べ)。HANOWAは大枠でいうと、給与所得に対して手数料をかけているような格好になりますので、十分な規模の市場として捉えています。
また、国の方針としても歯科における予防医療には力を入れており、公的な後押しの風もございます。
そして、規模は十分な市場だからこそか、そこにはソフトウェアやIoTデバイスなどよる業務の効率化や、様々なアプローチで解決を図ろうとする方々がいらっしゃいます。ただその中でも今までの商習慣に比較的近く、わかりやすい解決策であるHANOWAのアプローチが最も導入が進むのではと考えております。
競合優位性
まずそもそも人材不足の課題を解決するに、業務の効率化で解決するケース、人の過不足を流動性をあげることで解決をするケース、完全自動化により人を不要とし解決するケースなどが主なところかと考えます。
その中で、HANOWAは人の過不足を流動性をあげることで解決するケースに該当しますが、このケースの中ではわかりやすい競合はいないと解釈しています。
単純な歯科人材特化の人材紹介会社様などは近いケースでの課題解決を図ってますが、それらに対しては、歯科医院様目線で短期的な人材不足を解決しやすい点や、明確なコストメリットという点でも、優位なポジションにあると考えます。
投資時点でのマーケットフィット
弊社の投資時点では、ほとんど導入も進んでいなかったため、マーケットフィットの確からしさは不明瞭だったと思います。
別観点で、サービス面の課題としては、まだまだUIUXともに弱く、シンプルに使いにくさが残っていたことは挙げられます。
ただ、足りないものだらけではありましたし、小さな単位ではありましたが、事実として使われ、課題を解決し始めていた状態でした。
エクイティストーリー
まずは足元の事業の充実と、拡張かなと捉えています。
歯科衛生士単体で見ても、まだまだ余白はありますが、現在のHANOWAの事業を伸ばしていくと、人材不足に悩む歯科医院様との繋がりは比例して増えてまいります。
それらを活かし、拡張するのは歯科医師や歯科技工士の流動性の向上かもしれません。
そしてその次に活かせるのは、自然と溜まっていく、流動的に働きたいと考えている歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士などの人材データ資産です。
深い言及はしませんが、中長期ではそういった人材データを持っているからこそ、競合優位性が築け、大きな課題解決のできる市場でのチャレンジになってくるかと考えています。